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展示諸本解説


◆真福寺本『古事記』(複製)

 『古事記』は、現存する日本最古の歴史書である。稗田阿礼が天武天皇の勅で誦習した帝紀および先代の旧辞を、太安万侶が元明天皇の勅により撰録して七一二年(和銅五)に完成した。天地開闢から推古天皇までの記事を収め、神話・伝説とたくさんの歌謡を織り交ぜながら、天皇を中心とする日本の由来を物語る作品である。
 展示する真福寺本は、一三七一年(応安四)から翌年にかけて真福寺の僧賢瑜が書写した最古の写本である。真福寺宝生院(名古屋市・大須観音の名で親しまれている)が所蔵することによって名付けられたが、現在は東京国立博物館に寄託保存されている。


◆本居宣長『訂正古訓古事記』



 江戸時代後期の国学者本居宣長(一七三〇〜一八〇一)は、古事記研究にとって決定的な役割を果たした四四巻から成る注釈書『古事記伝』を著した。この大著は一七六七年(明和四)に筆を起こし、一七九八年(寛政十)にようやく完成した。この注釈書にみえる宣長の皇国史観に基づく実証主義的な態度は、今なお古事記研究の基礎として重要な位置を占めている。
 展示する『訂正古訓古事記』は、すでに出版されていた『古事記』の誤りを正したいという弟子たちの勧めをうけて出版したものである。『古事記伝』の成果をふまえた本文と訓だけのテキストであるが、実際に刊行されたのは一八〇三年(享和三)で、宣長没後二年がたっていた。


◆寛文九年版『日本書紀』



 『日本書紀』は、三十巻から成る日本最古の正史(天皇の命令で編纂した正式な歴史書)である。舎人親王を中心として七二〇年(養老四)に編纂された。神代から持統天皇までの朝廷に伝わった神話・伝説・記録などを、修飾の多い漢文で書き記した編年体(年月順に記録する方法)の歴史書である。
 展示する『日本書紀』は寛文九年(一六六九)に出版されたもので、江戸時代にもっとも流布したテキストである。なお当館所蔵本には、江戸時代後期の国学者山田以文(一七六二〜一八三五)が校訂を加えた『日本書紀』との違いを書き込んだり、江戸時代に伝わっていた秘伝も書き加えられている。


◆西本願寺本『万葉集』(複製)

 西本願寺本は、鎌倉時代後期に書写されたもので、『万葉集』全二〇巻がそろった最古の写本である。筆者は不明だが、四人が分担して書写したことが判明している。
 鎌倉時代に仙覚が校訂を加えた『万葉集』の系統のなかでもっとも古い時代に書写されたものであるため、現在のテキストの底本として多く使用されている。
 西本願寺(京都市)がもとの所蔵者であることによって名付けられたが、現在はお茶の水図書館が所有している。


◆元暦校本『万葉集』(複製)

 元暦校本は、平安時代中期に書写されたもので、巻三・五・八・十一・十五・十六をのぞく十四巻分が伝わっている。いくつか発見されている断簡(床の間を飾る掛け軸のためなどに切れ切れにされたもの)をふくめると、約二七〇〇首の歌が残っていて、鎌倉時代に仙覚が校訂を加える以前の『万葉集』の形を伝える非常に貴重な写本である。
 なお元暦校本という名称は、巻二十の奥書(筆者や年月日などの書写事情などを記した部分)に元暦元年(一一八四)という年時が記されていることに由来する。十四巻分は現在東京国立博物館が所蔵する。


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